ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年11号
特集
第5部 事例研究:バリュー・ネットワーキング 東京エレクトロン「FRAPS」を活用しリードタイム短縮

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

NOVEMBER 2013  28 全国に分散する調達物流を統合  半導体製造装置で国内最大手、世界でも第三位 のシェアを誇る東京エレクトロン。
そのグループ会 社で主力工場の一つである東京エレクトロン九州 (熊本県合志市)で、一〇月から部品調達の新た なスキームが動き出した。
 サプライヤーからの納品輸送をヤマト運輸に 集約。
工場から約一〇劼竜離にあるヤマトの 営業所に全国から部品を集め、調達・納品支援 システム「FRAPS」( Free Rack Auto Pick System)で即座に工場の納品ロケーション別に仕 分ける。
 これによりサプライヤーの出荷から生産ライン に投入するまで三日から四日掛かっていたリード タイムを二日短縮した。
在庫負担を軽減しただけ でなく、工場内の物流棟で処理していた仕分け作 業も大幅に軽減された。
 改善に着手したのは二〇一〇年の秋。
開発サイ クルが日進月歩の半導体業界では、顧客の納期短 縮ニーズが年々強まっている。
 これに対応するには生産工程のさらなる短縮が 必要で、その一環として調達物流の改善に取り組 むこととなった。
 それまではサプライヤーがそれぞれ任意に物流 会社を選択していた。
敷地内の物流棟には約三〇 もの物流会社がバラバラに納品に訪れていた。
各 社の納品のタイミングが読めないため工場敷地内 に保管用の倉庫を設け、一定量の在庫を保有して 納品遅れなどの突発的な事態に備えていた。
 改善に当たって「当初は単純なミルクラン方式を 想定していた」と東京エレクトロン九州の山内貴 士生産管理部長は言う。
しかし、部品の調達先は 国内だけでも約三〇〇カ所に上り、九州から東北 まで立地が分散している。
 しかも部品数は数万点に及ぶ。
小さい物はねじ 一本から、大きい物では大型トラックでの輸送が 必要になるなど、種類やサイズは多岐にわたる。
アイテムによって納期も異なる。
 さて、どうしたものかと検討を始めたところ東 日本大震災に直面。
その影響で半年遅れて一一年 一〇月から取り組みを再開し、全国規模のネット ワークを持っている大手物流会社のうち数社をピ ックアップし、各社から提案を受けた。
 その結果、ヤマトに委託することを決めた。
東 京エレクトロン九州の山内部長は「半導体分野は 東京エレクトロン 「FRAPS」を活用しリードタイム短縮  生産サイクルタイムを短縮するために調達物流にメスを入 れた。
それまでのサプライヤー任せを改め、ヤマト運輸に業 務を集約。
さらにFRAPS を活用して、リードタイムを大幅 に短縮するスキームを組んだ。
約8 割のサプライヤーがこれ に賛同し、新たな仕組みが動き出した。
     (鳥羽俊一) 新たな調達物流のフローチャート 国内部品サプライヤー ヤマト運輸 熊本スルーセンター 東京エレクトロン 九州 FRAPSによる 高速仕分け 国内部品サプライヤー 国内宅急便 ネットワーク 5 事例研究:バリュー・ネットワーキング 29  NOVEMBER 2013 て全国のターミナルから幹線便で到着した貨物の 開封・仕分けが早朝二時から即時可能になる。
朝 一番には納品できる。
 従来は各地から熊本まで荷物を運ぶのに二日か ら三日掛かっていた。
しかも同じ早朝二時に熊本 に到着した荷物でも納品は同日の午後以降。
それ から工場の物流棟で開封・仕分けを行うため、生 産ラインに投入できるのは翌日以降だった。
 ヤマトはFRAPSを活用して完全に仕分けら れた状態で部品を納品するため、物流棟の作業も 省略できる。
 これにより従来では翌日回しとなっていた部品 を当日の朝一番から使える。
リードタイムが二日 短縮され、その分、安全在庫を低減できる。
サプライヤーの約八割がスキームに賛同  ただし、このスキームはサプライヤーが既存の 協力物流会社をヤマトに切り替えることに賛同し なければ実現しない。
サプライヤーとの取引条件 は物流費込み。
納品輸送費はサプライヤーが支払 っている。
 サプライヤーにヤマトの利用を強制することは できない。
そのため東京エレクトロン九州では、 サプライヤーを集めて説明会を開催した。
 生産管理部とヤマトの担当者は今回、調達物流 を改善するに当たって各サプライヤーに物流会社 をヤマトに変更することを推奨・提案してきた。
 「これまでの取引条件を変更せずに、ヤマトさ んの輸送ネットワークに乗せることで迅速かつ確 実な納品が可能になり、サプライヤー側にも納期 面で余裕が生まれ生産効率も向上する」(山内部長) といったメリットを説明し理解を求めた。
スペック基準が厳しい。
委託先の選定では輸送品 質を特に重視した。
その点、ヤマトさんは外部委 託せずに、宅急便の全国ネットワークを使って最 後まで自社で輸送するというので信頼性があった」 と話す。
 集荷は各サプライヤーのアイテムと出荷量に応 じて、宅急便、路線便(ヤマト便)、チャーター 便を使い分ける。
それをヤマト運輸熊本主管支店 施設内の「熊本スルーセンター」に集める。
生産 ラインへの投入には専用便を使うことから、品質 の担保に加えて細かな納品方法の指示にも対応で きる。
 
稗圓魍萢僂靴寝瀛情報の提供も大きかった。
ドライバー全員に携帯端末を配備しているため、 出荷から納品までのステータスをリアルタイムで把 握できる。
出荷や輸送の遅延に柔軟に対応できる。
到着時間が事前に分かるので工場の作業計画も立 てやすくなる。
 この取り組みに合わせてヤマトは「熊本スルー センター」にFRAPSを導入した。
これによっ  サプライヤーには納期面に余裕が出ることに加 え、梱包に使用する段ボールがヤマトのリサイク ル可能なボックスに切り替わるため、今後は梱包 に関する時間やコストも節約できるようになる。
 ヤマトのネットワークに切り替えることで、実 際に輸送単価をこれまでと比較して大きく下げる ことができたとする報告が多くのサプライヤーか ら寄せられているという。
 既に七〜八割のサプライヤーがこのシステムへ の参画を決めているという。
九月半ばより一部の サプライヤーと試験的に運用を開始し、一〇月か ら本格稼働している。
 当面は主要なサプライヤーから順次切り替え作 業を行い、年内にも移行を完了させる。
その実績 を報告することで、現時点では承諾を得られてい ないサプライヤーにも参加を呼び掛けていく方針だ。
 調達物流の改善はリードタイム短縮以外の効果 ももたらしそうだ。
物流棟の仕分け業務が不要に なることで生産管理部のマンパワーには余力が生 まれる。
既に当該業務を担当していたスタッフの 一部を別部門にシフトさせた。
 物流棟や保管倉庫のスペースにも余裕が出てく る。
それを受注拡大に伴う増産対応や生産能力の 拡充などに有効利用していくことを視野に入れて いる。
半導体製造装置は今後大型化していく可能 性があり、その点でも余剰スペースが生きてくる とみている。
 今のところ東京エレクトロン九州の調達先は国 内が大半で、海外からの調達は限定的だ。
しかし 将来、海外調達比率が上昇した場合には、今回の スキームを海外のサプライヤーに適用する可能性 もあるという。
東京エレクトロン九州向けにカスタマイズされた FRAPS。
作業ラインごとに部品を自動仕分けできる。
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