ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年10号
SOLE
活き活き組織構築のためのストレス・マネジメント・コミュニケーション

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SOLE 日本支部の報告 OCTOBER 2013  100  組織のコミュニケーションのレベル は、会議を見ればおおよその状況を 把握できる。
会議は組織コミュニケー ションの縮図であり、会議の活気がそ のまま組織の活気と言える。
会議で ろくに意見も出ず、議論を交わすこ ともなく、ただの報告会を繰り返し ている組織は要注意である。
 異論の出ない会議では、多くの情 報が現場に眠ったままの状態で放置さ れる。
表面的な問題しか見えず、努  活気のない組織は生産性が悪い。
これは業種を問わず全ての企業に共通 することで、物流業のように人手に 頼る職場ではとりわけその影響は大 きい。
しかし、多くの企業が問題に 真に向き合おうとしていない。
表面 的な取り組みにとどまっているのが現 状である。
カウンセリングとコンサル ティングの両面からのハイブリッドア プローチでこの問題に対処し、スタッ フの能力を最大限に発揮できる環境 構築の考え方を紹介する。
(瀬川裕之) 活気のない組織は生産性が悪い  図1は活気のない組織がなぜ生産 性が悪くなるのかを簡単にまとめた 図である。
この図からも分かるよう に、まず活気のない組織は必ずコミュ ニケーションが十分に取れていない状 況にある。
また、組織のビジョンや目 標が不明確で浸透していないことも、 多くはコミュニケーション不足が原因 である。
 コミュニケーション不足に陥ってい る組織内の人間関係は当然ながら良好 とは言えない。
多くの場合、組織内 にインフォーマルな組織(仲良し組織) が形成され、その中では意思疎通も図 れ、情報もスムーズに流れている。
 半面、本来のフォーマルな組織で の意思疎通が不十分な状態になる。
その結果、組織内でストレスが溜まり、 やる気は低下し、個々の能力を十分 に発揮できない環境ができ上がってし まう。
 組織内のコミュニケーションが悪い と、個人が情報を抱え込んだりして 情報の共有化が図れなくなる。
情報 不足のまま計画を作ることで、実施 段階において変更や修正による現場 の混乱、新たな情報収集などによる 管理工数の増加が日常茶飯事のよう に起きる。
 それを避けるため、多くの企業が 仕組みを作り、情報の迅速な伝達と 共有化を図る努力をしている。
しか し、その結果として本来は簡単にで きることをわざわざ複雑にしている ことも多く、無駄な作業を増やした だけで自己満足に終わっていることも 少なくない。
活き活き組織構築のための ストレス・マネジメント・コミュニケーション 力の割に結果が伴わない。
そのこと を誰もが薄々分かっていながら、いつ しかそれが当たり前になり、無駄な 会議が今日も続いているのである。
 表面上のコミュニケーションはやが て、あいまいなコミュニケーションと なり、組織内に次の「五つのあいま い」を生み出すこととなる。
1.あいまいな計画 2.あいまいな決断 図1 活気のない組織の生産性が悪い理由 活気のない組織 コミュニケーションが悪い 意思疎通が取れない ストレスが溜まる 能力を発揮できない 異論が出ない 常に受身の仕事意見・アイデアの欠如生産性が低下する やる気の低下無駄な作業が増える 計画の変更・修正管理工数の増加 仕組みで補う情報不足な計画 情報の伝達・共有ができない 問題・課題が不明確 ビジョン・目標が不明確 101  OCTOBER 2013 ケーションの向上が個々の最適ストレ スゾーンを明確にし、従業員の能力 を最大限発揮することのできる環境 の構築へとつながっていくのである。
 筆者はこれまで現場改善コンサルタ ントとして多くの企業で多くの方と接 してきたが、その誰もが一定レベル以 上のコミュニケーション能力を有して いた。
にもかかわらず、組織内では 説明不足になる、相手の話を聞かな い、言葉使いが悪い、ついつい嫌味 を言ってしまう、ぶっきらぼうに話し てしまうという人が珍しくない。
 そのことを自覚している人もいれ ば、全く自覚できずに、仕事になる とまるでもう一人の人格が現れるか のような人もいる。
 それらの人々も決してコミュニケー ション能力がないわけではない。
そ の証拠に私とのコミュニケーションは 良好なのである。
能力を使えていな いだけである。
すなわち能力を発揮 できる環境が構築できていないので ある。
 コミュニケーションに最も大きな影 響を与えるのがストレスである。
「イ ライラする」これは誰もが知るストレ ス反応であるが、イライラした状態で しっかりとコミュニケーションを取る のは難しい。
 イライラが日常化し、コミュニケー ション能力が発揮できない状態でコミ るスポーツ選手でさえ自己のストレス をコントールすることは難しい。
スト レス解消法など理屈では理解できてい ても実際にそれを継続的に行うのは 容易なことではない。
 適正なストレスゾーンは個人によっ て違いがあり、その曲線の形も人そ れぞれである。
ストレスの受け止め方 や耐性にも違いがある。
個々の能力 を十分に発揮できる環境を整えるに は、その違いを自他共に認識する必 要がある。
 それを認識する手段として基本中 の基本となるのがコミュニケーション である。
つまり、組織内のコミュニ 3.あいまいな問題・課題 4.あいまいな仕組み 5.あいまいな認識  情報不足の計画、責任者のいない 決断、結論の先延ばし、うわべだけ の問題や課題、人によって変わる仕組 みやルール、知っているつもりに分か ったつもり。
これらのことを、誰も が問題であり、無駄だと思っている。
しかし、そのことを口にはせず、そ のうち疑問にも思わなくなってしまう。
口を開くのは居酒屋で愚痴をこぼす ときだけである。
 そうなると組織の競争力は低下の 一途をたどる。
表面的な改善を行な っても根本的な部分にメスが入らず、 やがて改善活動自体もあいまいにな ってしまう。
ストレスが能力を蝕んでいる  図3はヤーキズ・ドッドソンの法則 と言い、横軸にストレスを縦軸にパフ ォーマンス(能力)を表した図である。
まず、この図を見て分かることは、人 はストレスが大き過ぎても小さ過ぎて もパフォーマンス(能力)を十分発揮 することができないということであ る。
 多くの日本の職場は今、ストレスが 大き過ぎることで十分なパフォーマン ス(能力)が発揮できない状態にあ る。
そのことがまたストレスを増大さ せる悪循環に陥っている。
そのストレ スの要因の一つが人間関係であるこ とは言うまでもない。
 さらにグローバル競争の中で相対的 に賃金水準の高い日本において、従 業員はより多くの付加価値を生み出 すことを求められている。
要求レベル は年々上がっていき、適正なストレス ゾーンは狭まっている。
 その結果、多くの従業員が自己の 適正なストレスゾーンを大きく超えた エリアで日々の業務に取り組むことに なり、十分なパフォーマンス(能力) を発揮できない状況にある。
 ストレスをコントロールすれば良い と考える方もいるかもしれないが、一 流のメンタルコーチがサポートしてい 図3 ヤーキズ・ドッドソンの法則(ストレス・パフォーマンス曲線) 絶好調 現在の要求レベル 以前の要求レベル 大パフォーマンス小↑ ↓ やる気 なしやる気 出ない 小 ← ストレス → 大 適正ストレスゾーン 図2 5つのあいまい あいまいな 認識 あいまいな 計画 あいまいな 決断 あいまいな 仕組み あいまいな 問題・課題 あいまいな コミュニケーション ュニケーションを取り続けるとどうな るか。
当然、関係は悪化する。
関係 が悪化すればコミュニケーションを取 るのはさらに難しくなる。
その結果、 さらにストレスが溜まる。
 誰が考えても分かることだが、日 常の組織内ではこのようなことが当 たり前のように繰り返されている。
ま さに悪魔のサイクルに陥っているので ある。
ストレスをマネジメントする  先に述べたようにストレスは小さ 過ぎても大き過ぎてもパフォーマンス (能力)を発揮できない要因になる。
ではストレスの大きさとはどのような ことなのだろう。
 ストレスの大きさは、「ストレッサ ー×受け止め方」で決まる(図4)。
ス トレッサーとは、簡単に言えばストレ スの素となる刺激のことである。
「ス トレス要因」とも言われる。
その刺激 をどう受け止めるかでストレスの大き さが決まる。
 つまり、同じストレッサーでも受け 止め方が変わればストレスの大きさは 全く変わってくる。
その受け止め方は、 個人によって異なるのはもちろん、実 は組織環境によっても大きく変わって くる。
 その要因の一つが組織における「当 たり前レベル」である。
企業において は独自の当たり前が数多く存在する。
 例えば、挨拶。
企業によるその差 は歴然である。
これは能力の問題で はなく、当たり前レベルの違いであっ て、キチンと挨拶をするのが当たり前 の企業においては、誰もがストレスな く挨拶をすることができる。
当たり 前なのだから当然である。
 しかし、普段からお互いろくに挨 拶もしていない企業において、来客 だからと急に挨拶することを意識さ せようとするとストレスが生じ、ぎこ ちない挨拶になってしまったり、その ストレスを別のところで発散しようと したりする。
 これは全ての業務に言えることで、 普段から議論するのは当たり前、会 議では発言するのは当たり前、翌日の 予定をしっかり確認するのは当たり前、 迅速に報告するのは当たり前という ように、それらが当たり前になれば 組織全体のストレスの受け止め方が変 わり、余計なストレスを負うことがな くなる。
よりパフォーマンス(能力) を発揮できる環境が整うのである。
 普段なかなか気が付かないが、そ の当たり前レベルがそのまま組織の競 争力となることを認識してほしい。
 当たり前のレベルを上げていくこと は、ストレスをマネジメントしていく ことにつながる。
しかし、実際には 当たり前のレベルを上げていくこと自 体にも大きなストレスが生じる。
 人を変えるためには、「刺激×回数 ×想い」が必要であり、大きな刺激 (例えばリストラ)を与えれば一気に 変化をもたらすが、それは大きなスト レスとなり、さらに想いのベクトルが 合っていなければ、全く逆方向に向 かうリスクもある。
逆にごく小さな刺 激はストレスは少ないが、多くの時間 を要することとなる。
 そのバランスを見極めるために重要 なことが、やはりコミュニケーション である。
 しかし、組織内のコミュニケーショ ン環境をすぐに変えることは難しい。
研修に出席してみたり、講習会を開 催してみたりしてコミュニケーション レベルの向上に努めても、なかなかそ の成果は現場に反映されないのが実 情である。
 いくら個人レベルで理屈を学んでも、 それだけでは結局は元の木阿弥とな ってしまう。
そこで、本来の能力を 発揮できる環境を構築し、組織全体 のコミュニケーションレベルを向上す るために「ストレス・マネジメント・ コミュニケーション」の実践をお薦め したい。
「ストレス・マネジメント コミュニケーション」とは  組織における当たり前を変えると いうことは社風を変えるのと同じで、 一朝一夕にはいかない。
そこで、表 1のようにCAPDのサイクルを三カ 月から六カ月掛けて回していく。
 これは組織的に取り組まなければ 意味がなく、最低でも部課単位それ も全員参加で実施することが条件で ある。
できれば推進事務局を設置し て、プロジェクトとして取り組むとよ り効果的である。
さらに言えば、個 人レベルでのストレス・マネジメント を並行して行うと良い。
 
達腺丕弔離汽ぅルの中で最も重要 な項目であり難しいのが、一番初め の「C(チェック)」に当たる「スト レスチェック」である。
この部分がい い加減になると活動の全てがいい加 減となり、やったつもりとなってしま う。
活動自体が逆効果になってしま う危険性もある。
 ストレスチェックで感じていること の全てを洗いざらい吐き出させるよう OCTOBER 2013  102 図4 ストレスとは? ストレス=ストレッサー×受け止め 当たり前のことにストレスは感じない 当たり前レベルを上げる=受け止め方が変わる 組織の当たり前レベルはどうか? 挨拶、服装、約束、ルール、整理・整頓・ 清掃、事前準備、連絡、報告、確認、ミー ティング、会議、計画‥‥etc 103  OCTOBER 2013 組織力を弱体化させるだけである。
 とはいえ、人間とは弱いものであ る。
そこで、その弱さを克服するた めにも最低月一回、意味のある報告 会を実施してほしい。
初めは資料を 作成したり発表の準備がストレスと なるが、それが当たり前になればス トレスもなくなっていく。
つまり当 たり前のレベルが上がり、組織力が 上がる。
 それでも継続が難しいと感じたら、 時には再びストレスチェックに戻り現 状を把握することも必要である。
新 たなストレスが活動の推進を難しくし ているのは良くあることで、新しい 発見が次の課題となり、活動を活性 化する。
 良い環境も悪い環境も全ては継続に よって出来上がったものである。
悪い 環境は、初めは楽だが後で苦労を生 むことになる。
良い環境は、初めは 苦労しても後に楽が訪れる。
どちら が勝ち残るかは明白だ。
始めるなら 早い方が良い。
この活動を組織改革 のスタートと位置付け、力の出せる組 織で本当に勝ち抜くための力を培って ほしい。
 このCAPDが定着した後も次の ステップとして、コミュニケーショ ンイベントの設定や生きたチーム編 成、課題を先取りした日程計画、人 材育成・課題の見える化・日程管 理の三位一体計画、真の課題バラシ、 さらには本当に現場で活きるWBS (Work Breakdown Structure)展開、 付加価値を生むムダ取りなど、当たり 前レベルを上げるための課題は山ほど ある。
 さらにその先にはダントツの競争力 (QCD)を手に入れるための戦略的組 織展開が待ち受けている。
それらをや り抜くためにもぜひストレス・マネジ メント・コミュニケーションを実践し、 本気で議論し、指摘し、異論の言える 活き活き組織になってほしい。
のスピード感が組織全体に刺激を与え、 次なる改革への想いにつながる。
 当然、そのためには多くのエネルギ ーが必要となる。
しかし、従業員た ちの真の声を聞いたにもかかわらず、 思い切った行動に移れない組織は本気 で変わろうとする意識がないのと同じ である。
その後も大きく変わることは 難しい。
形だけの活動ならすぐにで も頭を下げて中止したほうがましだ。
 アクションが動き始めたらしっかり と計画(P)を立てて、確実に実行 (D)していくことである。
先述の 「当たり前のレベル」を上げていく計 画と並行して業務計画も見直す。
こ れまでのあいまいなコミュニケーショ ンに基づく業務計画をやり直すので ある。
 あいまいさを排除し、想いの詰ま ったワクワクする計画を立て、それら をしっかりと見える化する。
それによ って情報の共有化が進み、コミュニケ ーションもさらに活性化していく。
あ いまいだった問題・課題が深堀され る過程で新規プロジェクトが立ち上が ることも珍しくない。
継続は力なり  実施段階においては様々な壁に突 き当たる。
そこで言い訳をするのは 簡単だ。
しかし、言い訳を聞いて喜 ぶのは競合先だけであり、言い訳は に、トップが覚悟を持って環境を整え ることが必須である。
 ストレスの原因として上司や会社 に対して批判的な意見が出てくるこ とも多いが、それを出し切らなけれ ば本当の改革にはつながらない。
ま ずはしっかりとストレスチェックをで きる環境を作り上げることが成功の 鍵となる。
 
達腺丕弔痢孱叩廚紡海「A(ア クション)」においては、できること はすぐにやることが重要である。
そ ※ S O L E(The International Society of Logistics:国際ロジスティクス学会)は一 九六〇年代に設立されたロジスティクス団体。
米国に本部を置き、会員は五一カ国・三〇 〇〇〜三五〇〇人に及ぶ。
日本支部では毎 月「フォーラム」を開催し、講演、研究発 表、現場見学などを通じてロジスティクス・ マネジメントに関する活発な意見交換、議 論を行っている。
次回フォーラムのお知らせ  次回フォーラムは2013年10月 15日(火)、東京・浜松町の商工会館 6Fで開催する。
年次総会として今期 の活動実績および来期計画を発表す る予定。
同フォーラムは年間計画に基 づいて運営しているが、単月のみの参 加も可能。
一回の参加費は6000円。
お問い合わせは事務局(s-sogabe@ mbb.nifty.ne.jp)まで。
表1 活き活き職場構築プロジェクト(3カ月〜6カ月) C:Check ストレスチェック 1.自分のストレスの状態 2.周り(人)のストレスの状態 3.周りの環境(組織編制、レイアウト、ルール、指示系統、 独自の仕組み、計画、設備状況、会議や打ち合わせの進 め方など)によるストレスの発生状態 4.コミュニケーション状態 A:Action すぐやる1.自分自身・チームレベルでの改善の実施 2.組織レベルでの改善の実施 P:Plan 当たり前レベル アップ計画改善計画(C・Aでの状況から計画) 業務計画 中長期計画・各種プロジェクトの追加・見直し D:Do 実行 各計画に対して1カ月単位で状況確認を行いながら進める 項目内容

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