ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
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2013年10号
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第87回 近鉄エクスプレス 収益性重視でライバルと明暗分ける航空貨物の減少も一巡し回復の兆し

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2013  76 航空貨物の荷動き反転は近い  近鉄エクスプレス(KWE)と郵船ロジスティ クスの株価に差が付いている。
二〇一二年十二 月末〜一三年八月末に、KWEの株価は二二% 上昇した。
これに対して郵船ロジの上昇率は十 二%だった。
KWEが郵船ロジと比較して評価 されているのは、営業利益率が相対的に高いこ とに加え、郵船ロジの業績が伸び悩み、下方修 正を繰り返したことが影響していると当社では 考える。
 しかし、そのKWEでさえ、航空貨物の荷動 きの低迷を受けて、第1四半期(四─六月)決 算は減益となった。
株式市場からの評価を高める ためには、々匐輸出重量の回復に加えて、 相対的に高い営業利益率の維持、C羇経営計 画の着実な推進──が重要になってくると見る。
 まず、直近の決算動向だが、第1四半期の連 結売上高は前年同期比〇・七%(四・五億円) 増収、連結営業利益は同一九・四%(六・五億 円)減の二七億円だった。
増収は円安効果の六 七億円が大きく、営業利益段階での円安効果は 三・七億円だった。
 営業利益が六・五億円減少した内訳は、東ア ジア・オセアニアの三・七億円減、東南アジア の二・一億円減益などである。
航空貨物の重量 が各々二割程度減少した。
同期の日本は五・七 %の減収、〇・八%の営業増益で、コストコン トロール力が発揮された。
 第2四半期(七─九月)に入って、同社の取 扱航空貨物輸出重量は悪化幅が縮小している。
前年同月比で四月が一六・三%減、五月二一・ 三%減、六月十二・四%減、七月二・九%減で、 ようやく一巡感が出てきた。
第2四半期の日本 の売り上げ、コストコントロール次第では、連結 で上期計画に届く、あるいは未達でも計画との 差はわずかにとどまると見る。
 マーケット全体を俯瞰すると、世界金融危機 以降、航空貨物市場は厳しい局面が続いた。
日 本の航空輸出混載重量は〇六年の一三二一トン をピークに減少傾向となっており、一二年はピー ク時の七割程度の水準である九一三トンとなっ た。
背景にあるのは、海上輸送へのシフトや現 地調達比率の上昇といった構造的な変化に加え て、欧州や中国を中心とした需要モメンタムの減 速による景気循環的なダウントレンドであろう。
 一方で、足元を見ると七月の航空輸出混載重 量は前年比四・四%減と一─六月累計の同一五・ 五%減から悪化幅が縮小しており、荷動きの低迷 に歯止めが掛かってきた様子もうかがえる。
また、 欧州の四─六月期のGDPが前期比〇・三%増 と7四半期ぶりにプラス成長に転じるなど景況感 の底入れの兆しも見えており、シクリカルにボト ムアウトする局面はそう遠くないと見ている。
近鉄エクスプレス 収益性重視でライバルと明暗分ける 航空貨物の減少も一巡し回復の兆し  フォワーディング大手三社のうち最も航空貨 物事業の比率が高く、相対的に高い収益性を維 持してきた。
極端な環境の悪化に見舞われた直 近の一年も、シェア拡大に走るライバルをよそ に収益性重視の営業戦略を貫いた。
日本発航 空貨物が回復に転じれば、大幅な利益増が期 待できる。
第87回 姫野良太 バークレイズ証券 シニア・アナリスト 77  OCTOBER 2013  地域別では、北米向けや欧州向けは、景気の 回復やスポット貨物等により悪化幅は縮小して おり、相対的に堅調に推移している。
特に完成 車メーカーの回復等もあり自動車部品が伸びを 牽引しているもようだ。
 アジア向けは、昨年はタイ洪水の特需があっ たため、前年比で二けた減が続いていたが、こ の影響も七月で解消される。
今後は、電子部品 関連の一部持ち直しも加わり、下期にかけて改 善に向かうと見る。
 電子情報技術産業協会(JEITA)による と、電子工業品の輸出実績は今年五月以降、前 年比プラス基調に転じている。
機器別に見ると、 テレビなどの映像機器は数量ベースで前年比大 幅減のトレンドが続いているが、航空輸送で運 ばれることの多い半導体メモリーが回復基調に 転じている。
 航空貨物輸出と相関の高いBBレシオ(半導 体の出荷額に対する受注額)や米国ISM製造 業景況指数も足元は改善の動きを見せており、今 後グローバル経済の回復が順調に継続すれば、航 空貨物需要の回復も期待できるであろう。
 七月の米国ISM製造業景況指数は五五・四 と、六月の五〇・九から大きく上昇、一一年六 月(五五・八)以来となる二年ぶりの高水準と なった。
六月のBBレシオも一・四〇と、五月 の一・一七から〇・二三ポイント増で三カ月連 続の上昇となった。
受注額は前年比三・四%増 と約二年ぶりにプラスに転じた。
 景気が反転して航空貨物市場が回復してくれ ば、KWEは相対的に高い営業利益率を維持し つつ、利益を拡大することが可能になる。
郵船ロジとの違いに注目  
烹廝鼎藩港ゥ蹈犬留超藩益率の違いについ ては、売上構成の違い、営業スタンスの違いが 主な要因と考えられる。
KWEの営業利益が一 三年三月期実績で五・四%、一四年三月期第1 四半期実績が四・二%であるのに対し、郵船ロ ジは同〇・五%、同赤字となっている。
 一一年三月期に郵船ロジに統合される以前の 旧郵船航空サービスは航空事業の売上構成比が 七〜八割と高く、海上/陸上輸送は主に親会社 の日本郵船で事業を展開していた。
これを統合 したことで、郵船ロジの航空事業の構成比は約 三割に下がり、KWEの約六割を大きく下回っ ている(一三年三月期実績)。
 一般に、航空フォワーディングに比べて海上フ ォワーディングは利益率が低い。
航空貨物はフォ ワーダーとキャリアの役割が営業と輸送で明確に 分かれているのに対し、海上貨物はキャリアが 自ら営業を行うことが多く、キャリアがフォワー ダーの強力な競争相手となる。
一方のロジステ ィクス事業も物流センターの投資負担が重く利益 率は低くなりがちである。
 
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特 にこの一年間、郵船ロジは戦略的に取扱シェア の拡大を進めてきた。
その影響で収受運賃が低 下し、収支が悪化してしまった側面がある。
ま た、東アジアの苦戦も大きい。
郵船ロジの一三 年三月期の東アジアの業績は前期比三八%の大 幅な増収でありながら営業利益は三二億円悪化 して、十一億円の赤字だった。
 数量拡大に注力した東アジア発の海上輸送の コストが、欧米航路を中心とする運賃値上げの 影響で上昇し、収益性が低下した。
一方のKW Eは、シェアよりも利益率を重視する営業方針 を取っている。
 以上のように、筆者は短期的には、日本発航 空貨物の推移や営業利益率の推移に注目してい るが、中長期的には中期経営計画達成に向けて の進捗も重要と考えている。
KWEは現在、今期 から一五年度までの三カ年の新たな中計「Ready for the Next ! Phase 2(未来への挑戦─さら なる飛躍へ)」を推進している。
その柱は、. ランスの取れた事業構成の構築と重点品目の取 扱拡大、∪長する新興国でのプレゼンスの向 上、オフショア販売の強化と効率性を追及し た高品質なオペレーションの構築──である。
 最終年度の一六年三月期の連結業績目標は、 売上高三三〇〇億円、営業利益一八〇億円が示 されている。
このうち利益額はやや強気な印象 を受ける。
グローバル大手顧客の取扱拡大、海 上・ロジスティックス事業の拡大、新興国での展 開等を積極的に推進する中で、「利益率を毀損せ ずに計画の売り上げが達成できるか否か」に注 目したい。
ひめの・りょうた 二〇〇四年慶應義塾大学経済学 部卒業、同年三菱証券入社。
明治 ドレスナー・アセットマネジメント のアナリスト、三菱UFJモルガ ン・スタンレー証券の運輸セクタ ー担当シニアアナリストを経て、一 二年四月より現職。

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