ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年10号
物流不動産Biz日記
第7回“他社の倉庫を紹介するのは言語道断だ”

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

 「おたくに倉庫探しを頼んでも、自社の物 件しか提案してこないじゃないか。
本当に当 社のことを考えてくれているのか」  一七〜一八年くらい前、私がまだ倉庫会社 の営業マンをしていた時代に、あるお客から 言われた言葉です。
ショックでした。
そのお 客とは長年の付き合いがあり、それまでに何 度となく荷物の保管も受託していました。
信 頼関係が成り立っている相手だと思っていた だけに、その言葉は胸に突き刺さりました。
 私がこのお客に提案していたのは、ちょう ど空きが発生した自社の倉庫に、改修工事を 施して貸し出すというスキームでした。
改修 費はお客の負担です。
立地としては良かった のですが、工事費用の負担が大きかったため、 お客は私の提案を受け入れるかどうか決めあ ぐねていました。
 そのときに、私のところに他社倉庫の空 き情報が飛び込んできました。
立地や予算は 完璧にお客のニーズに合致しています。
建物 のスペックや空調などの設備もそのまま使え、 申し分ありません。
この倉庫を提案すれば、 お客はすぐに決めることは明白です。
 私は上司にこの他社の倉庫を提案すべきで はないかと相談しました。
すると上司は一言。
「自社の倉庫が空いているのに他社の倉庫を 紹介するのは言語道断。
隠せ」と。
 確かに、そのお客とは何度も交渉を重ね、 やっと改修工事も含めた契約を締結する一歩 手前まで漕ぎ着けていました。
自社の倉庫に 誘致できれば、賃貸料もしくは保管料・荷役 料が契約期間中、継続して手に入ります。
 それに比べて、他社の倉庫を紹介しただけ では紹介料として賃料の一カ月分が手に入る だけです。
私もこの状況では上司に強く反論 することができませんでした。
 ところが、他社倉庫の存在がお客に伝わっ てしまったのです。
今のようにインターネッ トが広く普及している時代ではありませんで したから、まさかお客が他のルートからその 倉庫の情報を手に入れるとは思ってもいなか ったのです。
誤算でした。
 もちろん、情報を隠していた私に対するお 客の心証は最悪。
当然のように、お客は私の 提案を蹴り、他社倉庫を選びました。
しかし、 当時の私はまだ古い倉庫営業の感覚だったの で、お客に文句を言いました。
「うちとの仲 なんだから、私の提案を選んでくれたって良 かったのに」と。
そうしたら、冒頭の言葉を 返されたのです。
 この他社倉庫の情報をお客に伝え、提案し たのが「アバンセロジスティック」という会 社でした。
これが現在の当社「イーソーコ」 です。
当時からアバンセロジは、遠藤文社長 (現・イーソーコ代表)の下、自社物件にこ だわらず、お客の物流にとって最適な倉庫を 提案することを最優先していました。
現在、 イーソーコが推進している「物流不動産Bi z」の原型が、既に出来上がっていたのです。
 お客は「アバンセさんは、我々にとって本 当に使いやすい倉庫を提案してくれた」と大 喜びです。
完敗でした。
このとき、自社倉庫 至上主義の営業の限界を、私はハッキリと感 じたんです。
以来、遠藤と協力し、物流不動 産Bizを推進していくことになるのです。
 もし当時の私に今のような物流不動産Bi zのノウハウがあったなら、お客に最適な他 社倉庫を借り切って、それを転貸する爛泪 ターリース瓩鯆鶲討靴燭任靴腓Α
もしくは、 他社倉庫をお客に紹介して、倉庫内作業や運 送、改修工事などを受託するといったことを 考えたでしょう。
自社倉庫に固執することな く、ユーザー目線に徹すれば、お客にとって 最適な提案方法がいくらでも浮かんできます。
 最近の物流不動産市場は貸し手市場から借 り手市場へとシフトしています。
しかもお客 はインターネットなどを活用して、多くの倉 庫情報を簡単に手に入れることができるよう になりました。
このような状況で、従来型の 営業手法にこだわっていては、新規顧客の獲 得は難しくなる一方です。
他社倉庫や最新の メガ倉庫などの情報も幅広く収集し、最適な ものをお客に提案していかなければ、過去の 私と同じ過ちを犯し、お客の信頼を失うこと になるでしょう。
大谷巌一(おおたに・いわかず) 1957 年生まれ。
高千穂商科 大学卒。
81年東京倉庫運輸入 社。
同社物流部門、不動産部 門を経て2003 年イーソーコ副 社長就任(現職)。
2010年イ ーソーコドットコム会長に就任。
現在に至る。
著書に『これから は倉庫で儲ける!! 物流不動 産ビジネスのすすめ』(日刊工 業新聞社)など。
PROFILE 第7回“他社の倉庫を紹介するのは言語道断だ” OCTOBER 2013  66

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