ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年10号
ケース
エー・エム・エス 品質改善 ヨーカ堂の共配センター業務を通じて年商7億の物流会社が進める改善活動

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2013  68 「物流合理化努力賞」を受賞  物流会社のエー・エム・エス(以下、AM S)は、茨城県つくば市で二〇〇三年からイ トーヨーカ堂の「衣料共配センター」を運営 している。
年商は約七億二〇〇〇万円。
社 員数は三〇数人。
現場のパートタイマーなど を加えても従業員は百数十人程度と、企業規 模は決して大きくない。
 それでも同社の現場改善活動は関係者から 高く評価されている。
〇六年度にはヨーカ堂 の協力会社として「優秀賞」に選ばれ、翌〇 七年度は「最優秀賞」を獲得した。
ヨーカ堂 の物流部が進めてきた改善活動とは別に、A MSが自主的に品質改善に取り組んで結果を 出した点が評価された。
 一一年になると、ヨーカ堂の物流部門の薦 めもあって、一連の活動の成果を日本ロジス ティクスシステム協会が主催する「全日本物 流改善事例大会二〇一二」に応募。
見事に 「物流合理化努力賞」を受賞した。
 
腺唯咾琉惰E社長は「当社は事業規模も 小さいし、自分たちのやっていることにどう いう価値があるのかも分からず改善活動に取 り組んできた。
それをきちんと評価していた だけたことは、社員だけでなく、これを自分 たちで作り上げてきた現場のパートさんたち にとっても大いに励みになった」と言う。
 もともと同社は、マルダイという文具卸の 子会社として一九七八年に設立された。
当初 は量販店を対象に地図などを販売していたが、 マルダイの取引先を中心に徐々に事業領域を 広げていき、ヨーカ堂向けの納品代行業務を 手掛けるようになった。
 親会社のマルダイも、日用雑貨品の分野で セブン─イレブン・ジャパンの首都圏向け共 配センターの運営を受託して物流事業に着手。
一時は年商一〇〇億程度まで業績を伸ばした。
だが、セブンは九七年に自社専用の日用品卸、 SVDを設立。
これに伴いマルダイが手掛け ていた物流業務もSVDに移管された。
さら に文具卸の業界再編に巻き込まれ、マルダイ は大手に吸収されることになった。
 このときマルダイで物流事業に携わってい た人たちがAMSに移り、「商流と現場の分 かる物流専業者」(安藤社長)として再出発し た。
マルダイが東京に本社を構えていたため、 AMSの本社も東京にあるが、運用している 六カ所の物流拠点は全て茨城県内にある。
 
腺唯咾諒流事業は当初、ベンダーがヨー カ堂の専用センター(TC)に納品する業務 の代行がメーンだった。
しかし、九〇年代以 降、ヨーカ堂は複数のベンダーの商品を「共  作業内容が変化したことでミスが急増。
危機感 を抱いた経営陣は、手探りで品質改善活動をスタ ートさせた。
試行錯誤を重ねることで年間200件 近くあった誤納はゼロになり、作業生産性も飛躍 的に向上した。
地場物流会社による自主的な改善 活動は、主要荷主のイトーヨーカ堂をはじめ関係 者から高い評価を受けている。
品質改善 エー・エム・エス ヨーカ堂の共配センター業務を通じて 年商7億の物流会社が進める改善活動 エー・エム・エスの安藤哲社長 69  OCTOBER 2013 配センター」でまとめてからTCに納品する 体制の整備を進めた。
共配センターを利用す るベンダーが増えれば、納品代行のニーズは 減っていく。
 
腺唯咾論犬残りをかけて「衣料共配セン ター」の運営事業者を選ぶ物流コンペに参加。
大手と競い合って受託に成功した。
この結果 を安藤社長は、「長年にわたって培ってきた 信頼関係や、文具や雑貨で鍛えられたコスト 競争力を評価してもらえた」と理解している。
物流業は“品質”が唯一の商品  こうして〇三年七月、AMSは「つくば DC」を開設して、ヨーカ堂の「衣料共配セ ンター」を運営し始めた。
スタートは順調で、 〇四年二月からはアウトドア用品も扱い始め た。
しかし、そこに落とし穴があった。
不慣 れな商材のアイテム数が急増したことで現場 が混乱。
ミスが頻発してしまったのだ。
 中核荷主向け業務の品質の低下は、経営の 根幹を揺るがす。
事態を重く見たAMSは品 質改善活動に乗り出した。
これが冒頭で述べ た成果につながったわけだが、同社の現場改 善が成功したのには複数の要因があった。
 一つは、物流専業者として勝負していこう とするAMSの覚悟だ。
物流業には手に取っ て確認できる商材がない。
「じゃあ何が商品な のかと考えたとき、出てきた答えが猊兵銑 だった。
在庫の管理精度や納品精度を商品と してお客様に提供する。
胸を張って提供でき る商品があるからこそ仕事に意欲もわく。
そ う考えて品質向上に取り組み始めた」と同社 の林商昊取締役物流統括部長は説明する。
 ヨーカ堂の物流部が、日常的に物流品質を 数値で管理していることも幸いした。
協力物 流会社は毎月、「誤納率」や「在庫誤差率」、 また「作業生産性」といったKPIの実績を まとめて提出している。
クリアすべき目標は 明確で、品質を高めるほど数値で確認できる 環境が整っていた。
 文具卸の時代にセブン─イレブンの共配セ ンターを運営していた経験もプラスに働いた。
そのころから物流管理に携わってきた林取締 役は「常に人時生産性などを意識していた。
セブンさんの現場で学んだことが、現在の改 善活動にも活きている」と言う。
 加えて、流通業者として常に後工程を意識 しながら物流を管理してきたことも、自工程 だけを考えがちな物流専業者とは異なるアプ ローチを可能にした。
例えば、入庫時に荷物 を高く積み上げれば保管効率は高まるが、そ の後の工程にハシゴが必要なようではトータ ルの生産性は落ちてしまう。
いつでも後工程 を考える視点が身に付いていた。
 「衣料共配センター」では、ヨーカ堂のベン ダーが送り込んでくる商材を、まず荷受けし て預託在庫として計上する。
これをセンター 内で保管し、流通加工などを施した上でピッ キング。
店別・カテゴリー別に仕分けてから 林商昊取締役物流統括部長 作業内容の変化による混乱を乗り越え生産性と品質を高めた 600 500 400 300 200 100 0 600 500 400 300 200 100 0 出荷物量(万点) 誤納点数(点)・在庫誤差(点) 物量と誤納点数・在庫誤差の推移 05 年 06 年 07 年 08 年 09 年 10 年 11 年 12 年 出荷物量 600 500 400 300 200 100 0 120 100 80 60 40 20 0 出荷物量(万点) 作業生産性(点/人時)・人件費(円/1点あたり) 物量と生産性・人件費の推移 05 年 06 年 07 年 08 年 09 年 10 年 11 年 12 年 54 57 62 63 62 63 89 101 22 22 22 21 19 18 26 24 出荷物量 作業生産性 人件費 540 196 105 168 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 195 誤納点数 在庫誤差 梱包し、ヨーカ堂のTCに向けて出荷する。
 庫内では重量検品機付きのピッキングカー トやデジタル・アソート・システムなど高精 度のマテハンを採用しており、こうした工程 でミスが発生する可能性は少ない。
問題は、 繁閑差に起因する生産性の低下や、繁忙時の 人為的な作業ミス、センター内に保管してい る商品の在庫誤差などだった。
 改善活動を本格化するに当たって、まずは 現場で働くパート作業者の意見に耳を傾けた。
必要な帳票がない、作業ルールがないといっ た指摘が一〇〇件ほど集まった。
まずは約束 事を整えようと、床の線引きなどからスター トした。
この時点では既成の改善手法に関す る知識はほとんど持ち合わせていなかった。
平等の追求から生まれた多能工化  現場の作業者から出た意見の中には、担当 業務によって負担に差があるという指摘が少 なくなかった。
庫内には、ほとんど動かない 工程もあれば、常に歩き回る作業もある。
頻 繁に動く作業者からすると、動かない仕事は 楽に見えがちだ。
社展開する社内組織を設置し、各グループの 記録を掲示。
互いに刺激し合いながら全員で 活動を進められるようになった。
 そうした事例の一つが「端数表による管 理」だ。
共配センターでは商品が段ボール箱 で納品され、箱のまま在庫し、出荷時にバラ して出庫する。
入荷検品では箱の数と外装ラ ベルに基づくチェックだけで、実際の入り数 までは確認しない。
このため在庫データ上の 数と、実際に箱に入っている数に差異があっ ても、残数がわずかになるまで発覚しない。
 その時点で差異が見つかると、AMSの 管理ミスによる「在庫誤差」という扱いにな  「作業者の猜薪感瓩砲呂箸討盖い鮓っ た。
担当業務を固定していると、どうしても 隣の芝生が青く見えてしまう。
だから固定配 置で回すやり方を途中でやめた。
それが現在 の狢診醜化瓩砲弔覆っている。
そのころ の我々は多能工化という考え方そのものを知 らなかったが、結果的にそうなった」と当時、 共配センター長として改善活動の先頭に立っ ていた物流部の本橋一則統括マネージャーは 振り返る。
 とは言え、本来の目的である品質向上につ いての成果は限定的だった。
そのうちに商品 や備品を定位置で管理する約束事も崩れてき た。
改善活動は停滞してしまった。
 〇六年にヨーカ堂の物流部から一つの申し 出があった。
この当時のヨーカ堂は、トヨタ 生産方式(TPS)を店舗や物流拠点の作 業改善に適用して手応えをつかみつつあった。
AMSが改善活動で苦労していることを知っ たヨーカ堂の担当者が、ある店舗で実施され た「作業改善報告会」に参加できるよう、便 宜を図ってくれた。
 
腺唯咾禄蕕瓩董孱横咫廚筺峺える化」と いった改善手法に本格的に接した。
この経験 が転機になった。
「何よりも違っていたのは 狒完参加瓩紡个垢覦媼院
我々の活動は、あ くまで社員中心だった。
このときからTPS の手法も取り入れた全員参加型の活動にシフ トしていった」(本橋統括マネージャー)  改善活動は再び動き始めた。
2S活動を全 OCTOBER 2013  70 本橋一則物流部統括マネー ジャー 作業進捗ボードで情報を共有 平等のための標準化と多能工化 帳票の整理にも「2S」を徹底 現場主導で「見える化」を推進 外部からの指導を受けずに“自主改善” を推進 に集中できる環境だけを整えて、業務の一環 として手掛けてもらった。
 「社外で販売できるような立派なものでは ないが、この業務の煩わしさを知っている同 業者から『売ってくれないか』と言われるほ ど便利なシステムができた」と安藤社長は胸 を張る。
こうして知恵と工夫を駆使して活動 を進めた結果、管理指標は大幅に改善した。
改善を牽引できる人材の育成が課題  活動は今も前進し続けている。
近年の成果 としては、「不動在庫」と「活動在庫」のロ ケーションを見直した事例がある。
ヨーカ堂 のシステムからデータをダウンロードして、こ れをアクセスで自社開発したシステムで出荷 頻度ごとに抽出できるようにした。
毎週金曜 日にデータを分析し、土曜日に在庫ロケーシ ョンを見直すことを繰り返して、生産性を格 段に高めることができた。
 アパレルに特有の物量の波動に対応するた め、作業者の数を柔軟に調整できる仕組みも 構築した。
作業日の朝になるまで物量を最終 確定できないことには従来から苦慮していた。
電話連絡網やメールを使って当日朝に勤務内 容を伝える方法も検討したが、個人情報の開 示を嫌がる作業者もいて徹底できなかった。
 悩んだ末にインターネットの掲示板の活用 を思い付いた。
会社のサイトを公開している レンタルサーバーの空きスペースに、無料の掲 示板ソフトで作成した「AMS連絡掲示板」 を開設。
一日に三回内容を更新して、最新の 勤務シフトを皆が閲覧できるようにした。
一 年ほど掛けて関係者に周知したところ、作業 者と物量の大きな乖離は生じなくなった。
 
腺唯咾砲箸辰堂善活動は明確な武器とな った。
今や改善をさらに牽引できる人材の育 成が急務となっている。
そのために社員の評 価制度も見直した。
「改善活動に積極的に取 り組む人材をきちんと評価して、賞与なり昇 給に反映させる試みを四年ほど前からやって いる」と安藤社長。
改善活動が経営戦略にし っかりと組み込まれている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之) る。
しかし、これはAMSのミスとは限らな い。
アジア各地でベンダーが生産する商品の 入り数は梱包する時点で間違っていることも ある。
この場合、責任はベンダー側にある。
 責任の所在を明らかにするため、庫内で商 品を箱から出すとき、備え付けた「端数表」 に、誰が、いくつ取り出したのかをいちいち 記入するようにした。
そして残数が一〇枚以 下になったら実数をカウントする。
手間は掛 かるが、こうすればAMSの作業に誤りがな いことを証明できる。
実際、同社が責任を負 うべき「在庫誤差」は大幅に減った。
 ヨーカ堂の商品部の要請に応じてサンプル 品を預託在庫から出荷する「サンプル処理業 務」では、手作りの情報システムが活躍した。
商談後に戻ってくるサンプル品の管理には以 前から手を焼いていた。
通常の納品と違って 事前出荷データに基づく検品ができず、一つ 一つ商品コードや品番を手書きで記録してい た。
当然、ミスも発生する。
 この業務を刷新するため、センター内で余 っていたハンディスキャナーに着目した。
サ ンプル品のバーコードをスキャナーで読めれば、 転記作業などの負担を軽減できる。
ハンディ スキャナーをパソコンにつなぎ、マイクロソフ ト製のデータベースソフト「アクセス」で簡単 なシステムを構築した。
 パート作業者の中にアクセスを使いこなせ る人材がいたことから、システム開発のため に外部に支払った金額はゼロ。
担当者が開発 71  OCTOBER 2013 中2階から手製スロープで出荷 「端数表」で在庫管理精度を向上 付帯業務に携わるパート従業員 手作りシステムで業務を効率化 随所に手作りの工夫が目立つ共配センターの現場

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