ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年10号
特集
第5部 注目プレーヤーの開発戦略 「総合デベロッパーの強みを活かす」 三井不動産 三木孝行 執行役員 ロジスティクス事業部長

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2013  42 市場のパイを広げる ──昨年四月に専任部署の物流施設事業部を新設し て本格参入したばかりですが、今年一月には二〇一七 年度までに約二〇〇〇億円を投資する方針を打ち出 し、首都圏と大阪で一気に六物件の開発に新規着手 したことを発表しました。
かなりピッチが速い。
 「スタート初年度に当たる一二年度は四件程度の開 発着手を想定していたのですが、今所有している資 産を処分したいとのニーズがたまたま当社にいろいろ 持ち込まれたこともあり、スタートダッシュが肝心と 考えて積極的に用地を取得しました」  「また今年四月には物流施設事業部を『ロジスティ クス事業部』に改称しました。
我々が手掛けるのは旧 来型の保管倉庫とは違うということを明確に打ち出し て、我々自身も含めて社内外を目覚めさせようとの狙 いです。
部員数も発足時の七人から現在二三人まで 増やしました。
今秋にはさらに一人加わる予定です」 ──これまでの事業展開をどう総括しますか。
 「順調に来ていると認識しています。
やはり当社が 長年の不動産事業で築き上げた信用力、そしてオフィ スビルで約三〇〇〇社、商業施設で約二一〇〇社の 入居企業とそれぞれお付き合いしている実績が大き い。
用地取得や情報収集、テナント誘致の上で非常に 優位に働いています。
用地に関しては、だいたい月 に一〇〇〜一二〇件程度、年間にすると一四〇〇〜 一五〇〇件の情報が来ています。
実際に事業化の検 討に至るのはそのうち二〜三%といったところです」 ──先行してマーケットを開拓してきた海外勢など に、どう対抗していきますか。
 「これから我々は区画整理事業に伴う物流施設へ の建て替えや、開発が制限されている市街化調整区 域での物流施設開発にトライしていきます。
既に水 面下で話を複数検討しています。
再開発や調整区域 での開発に際して行政と交渉したり、地権者の信頼 を得て開発への同意を取り付けたりといった部分は、 圧倒的な経験と実績を持っています。
物流施設と商 業施設、オフィス、データセンターなどを組み合わせ た、まちづくりの視点に立った開発にも積極的にチ ャレンジしていきます」  「とはいえ、我々は最後発でもありますから基本的 には謙虚に、いろんな会社を真似ながら学べるとこ ろは学んでいきたい。
実際、昨年十二月に千葉・市 川で着工した当社第一号の案件はGLPさんと共同 開発し、さまざまなノウハウを学ぶことができまし た。
その一つとして例えば、施設内の一番良い場所 にカフェを設けた。
これは現場の従業員の方々が環境 に満足して気持ち良く働けるようにすることが、物 流施設では非常に大事になるからです。
BCP(事 業継続計画)も同じで、我々だけではなかなか気付 かない点を知ることができた」  「今年七月には既存物件の購入にも踏み切りました。
これには今後の自社物件竣工に備えて、プロパティマ ネジメント業務の経験を習得しておこうとの狙いがあ りました。
基本は自社での新規開発ですが、今後も 優良な物件があれば積極的に取得していきたい。
新 規開発する上で他社と連携する可能性もあります」 ──外資系は必ずしもライバルではない?  「ある一定のパイをみんなで奪い合うのではなく、 パイ自体を広げていきたい。
当社や三菱地所さんが 市場に新たに参入したことの意義も、それによって 物流不動産市場がより幅広く認知されたことにある と思います。
先行して取り組んでこられた国内外の 企業とともにこの業界をさらに大きくしていきたい」 「総合デベロッパーの強みを活かす」  2017 年度までに総額2000 億円を投資する。
その達 成に向け、昨年4月の本格参入以降、矢継ぎ早に大規 模な開発計画を発表している。
用地は月100 件以上も 舞い込んでくる情報を元に、相対で取得するのが基本 だ。
総合デベロッパーとしての実績と経験が物流施設 開発にも活きている。
      (聞き手・藤原秀行) 三井不動産 三木孝行 執行役員 ロジスティクス事業部長 第5 部注目プレーヤーの開発戦略 43  OCTOBER 2013 ──開発のペースをさらに加速させる可能性は?  「現在の総額二〇〇〇億円の投資計画は、 二〇〇〇億円を資産残高として持つ方針を会社から 了承されているということですから、物件を順次売 却していくことで持続的に開発を進めることができ ます。
今後も年間四件ぐらいは土地を取得したいと 思っています。
ただし、開発件数は一応の目安であ って、数ありきではありません」 ──出口戦略として、J─
劭釘稗埔緇譴盡‘い靴討 るとの発表もありました。
 「私募とJ─
劭釘稗圓鵬辰┐銅社保有という選択 肢もあります。
当社は開発だけでなく、所有と売却 と管理で、それぞれ利益を上げていく方針です。
状 況に応じてバランスを取っていくことになる」 ──現状は首都圏と大阪がメーンですが、エリア拡大 の考えは?  「今後は名古屋、福岡でも開発していきたい。
首都 圏、関西以外でもニーズはあると思っています」 入札には頼らない ──競争激化などの影響で土地代や建設費の上昇が 指摘される一方、賃料は大きく上げにくい。
収益的 には決して楽ではない状況だと思いますが、どのよ うに対応しますか。
 「土地代や建設費が上昇しているのは肌で感じてい ます。
一部の物件では高値が付いているものも見ら れます。
ただ、当社は用地の高値づかみはしていな いと思います。
明らかに金額が高い入札は見送って いますし、採算が合わない土地を値上がり前提で無 理して買うことはやらない」  「現状のように賃料が大きく上がらない状況では、 いかに土地を安く仕入れるか、工事費を抑えるかが重 要です。
用地に関してはなるべく入札に頼らず、多 くの顧客企業などを通じて情報を素早くつかみ、水 面下の営業で購入していく。
工事費についても、こ れまでのお付き合いのあるゼネコンとよく話し合い、 適正な価格に収める。
そのあたりが総合デベロッパー としての腕の見せどころだろうと思っています。
テ ナントに関しても、お付き合いのある約五一〇〇社 の中から物流ニーズの大きいところに、当社から積 極的に提案していきます」 ──物流施設の先進的機能としてはどのようなこと を盛り込んでいきますか。
 「太陽光発電パネルは全ての施設の屋根に搭載して いきたい。
さらに、BCPの観点から湾岸地域では 地震時の液状化対策をできるだけ施していこうと思 います。
マルチテナント型の施設は免震もできるだけ 取り組みたい」 ──当面のマーケットの展望は。
 「来年度まで大量供給が続きますが、今のところ十 分な需要があって吸収できている。
その先の一五、一六 年度の供給量は一三、一四年度ほどではないので、中 長期的に見れば、リーマンショックのような余程のこ とがない限り、需給は一定のバランスを取って推移し ていくと予想しています。
とりわけ通販業界には強 いニーズがある。
日本の通販利用率は欧米の半分以下 ですから、今後も伸びが見込まれます。
他にも、製 薬会社や食品、アパレルといったところもニーズをお 持ちなので、積極的に営業していきます」 ──物流施設事業の中長期的な目標は。
 「会社の収益に貢献する一人前の事業として一日も 早く認知されることを目指していきます。
一七年度の 会社の経営目標である『営業利益二四〇〇億円以上』 の中の一定割合を占められるように頑張ります」 三井不動産がGLP と組んで開発中の第1 号物件「GLP・MFLP 市川塩浜」(千葉県市川市) の完成予想図。
延べ床面積は12 万1000 平方メートル。
マルチテナント型で、約4 割は楽天 と賃貸借契約を締結した。
今年末に竣工予定。

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