ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2013年10号
特集
第3部 投資対象エリアが地方にまで拡大 日本不動産研究所 佐久間譲治 証券化部 インダストリアルチーム チーフ

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

OCTOBER 2013  30 投資家層の拡大で流動性向上  二〇一二年以降、物流施設の投資市場が活況を 呈している。
その大きな要因となっているのが、物 流施設をメーンの投資対象とするJ─
劭釘稗圈壁 動産投資信託)の相次ぐ上場である。
昨年十一月 の大和ハウスリート投資法人を皮切りに、GLP投 資法人、日本プロロジスリート投資法人、野村不動 産マスターファンド投資法人が新規上場した。
いず れの銘柄も、不動産デベロッパーなどの有力スポン サーから供給された先進的な物流施設をポートフォ リオに数多く組み込んでいる。
 物流施設が主要な投資対象のJ─
劭釘稗圓歪垢 く日本ロジスティクスファンド投資法人(〇五年上 場)と産業ファンド投資法人(〇七年上場)の二 社のみの時期が続いた。
J─
劭釘稗圓諒殕物件全 体に占める物流施設の割合は、前述の四社が上場 する以前には累積ベースで三%にも満たなかった。
しかし、直近ではその割合は九%超にまで上昇し ている。
長期的に安定した賃料収入が見込める物 流施設は、不動産投資市場におけるプレゼンスを 確実に高めていると言える(図表1)。
 また、公表されている情報は少ないが、上場し ない私募REITも一定の資金を物流施設投資に 振り向けている。
さらには、海外の年金基金やヘ ッジファンド等も日本の物流施設への投資を積み増 していることから、投資家層の厚みは確実に増し てきている。
 この投資家層の厚みは、従来物流施設への投資 に二の足を踏む投資家が多かった理由の一つであっ た低い流動性を大きく向上させることとなり、そ れが呼び水となって新たな資金や投資家を惹き付 けるという好循環が起きている。
 物流施設自体に対する理解、認知が進んだこと も、投資対象として物流施設が選択される要因と なっている。
特に最近では、インターネット通信販 売の継続的な拡大や、即日配送をはじめとするジ ャスト・イン・タイムに対する需要の高まりを受け 物流施設の重要性が認識されており、投資対象と しての「分かりやすさ」が投資家の間で共有され ている。
 流動性の向上とアセットに対する理解の深化は、 各投資家の物流施設に対する投資意欲を確実に掻 き立てている。
日本不動産研究所は今年四月、ア セットマネジメント会社や不動産会社、生命保険、 大手金融機関、投資銀行等、国内の主要投資家向 けに「第二八回不動産投資家調査」を実施した。
 それによると、今後一年間に積極的に新規不動 産投資を検討すると回答した投資家のうち、物流 施設を検討対象とすると答えた割合は約四割に達 した(図表2)。
これは商業施設の割合を上回り、 ファミリー向け集合住宅に迫る水準となっている。
 また、同調査における期待利回りについての回 答を見ると、その低下傾向が顕著である。
物流施 設に対する期待利回りは、ほぼ全ての地域で前回 調査(一二年一〇月実施)と比べて〇・一〜〇・ 二%低下した。
〇八年の金融危機前の水準にほぼ 近付いている。
 期待利回りの低下は、多くの投資家の間で今後 物流施設の人気がさらに高まるとの見方が広がっ ていることを意味している(なお、本調査におい て示している期待利回りは中央値=全回答を小さ い順に並べた際の中央の回答=であり、実際の大 部分の取引ではこれよりも低い取引利回りで成約 投資対象エリアが地方にまで拡大  物流不動産への投資意欲が商業施設を抜いて集合住 宅に迫る勢いを見せている。
資産の流動性は増し、リ スクプレミアムは急速に縮小に向かっている。
これに伴 い首都圏、近畿圏の物流一等地の利回りが低下したこ とから、投資検討エリアが首都圏周縁部や地方に広域 化している。
日本不動産研究所 佐久間譲治 証券化部 佐久間 譲治(さくま・じょうじ) インダストリアルチーム チーフ 東京大学大学院工学系研究科修了。
プ ロロジス、GLプロパティーズ(現グロー バル・ロジスティック・プロパティーズ) などを経て、2011年一般財団法人日 本不動産研究所に入所。
13年4月より 現職。
主に物流施設の鑑定評価やコン サルティング、マーケット調査などを行 う。
不動産鑑定士、公益社団法人日本 証券アナリスト協会検定会員。
PROFILE 第3 部 31  OCTOBER 2013 することから、当研究所では絶対値よりもその動 きに着目している)。
過小評価の修正が進む  この低下傾向の背景には大きく分けて二つの要 因が考えられる。
一つは、物流施設に対するリス クプレミアムの縮小である。
もう一つは、政府・日 銀のインフレ誘導政策、いわゆるアベノミクス等の 影響による日本の不動産全般に対する投資意欲の 高まり、すなわち不動産に対するリスクオンの姿勢 である。
 特に一点目が最近の利回り低下における要因と して大きいと考えている。
オフィスビルやマンショ ン等、他のアセットタイプと比較して、リスクプレ ミアム(スプレッド)が過大であったと認識され始 め、急速な修正、縮小の動きとなっている。
 そして最近、一部の投資家やアセットマネジャー (AM)の間では、日本において伝統的な投資対象 であるオフィスビルとの比較において、そのリスク プレミアムがどこまで縮小するのかという点が意識 されるようになってきている。
 オフィスビルと物流施設とを比較すると、中長 期的な賃料上昇期待度(理論的には賃料上昇期待 が高いほど利回りは低くなる)や価格に占める土 地と建物の割合(物流施設は建物の割合が相対的 に高く、減価償却負担が大きいことが配当利回り の低下要因となるため、より高い取引利回りが必 要とされる)の差異等により、一定程度のスプレ ッドが存在すると考えられる。
そのスプレッドがど こまで縮小するか、ということである。
 後者の減価償却負担に関しても、従来のJ─
劭 ITは減価償却費を控除した後の「純利益」を配 当の原資としてきた。
これに対し、GLP投資法 人日本プロロジスリート投資法人が「利益超過分 配」、すなわち減価償却費の一部も分配(出資の払 い戻し)を行うことで減価償却負担の影響を低減 し、配当利回りの低下を抑える戦略を取っている。
 このため、減価償却負担の大小に起因するスプ レッドはさらに縮小する可能性がある。
スプレッド 縮小に着目する投資家が出てきているのは、オフ ィスビルに比べて過小評価されていた物流施設を 見直そうとする動きが広がっていることの表れと 言える。
図表1 上場REIT の物流施設資産規模と全保有資産に占める物流施設の割合 上場年月投資法人名REITの タイプ(注) 物流施設資産規模 主なスポンサー (累積ベース) 2012 年10月末時点2013 年7月末時点 2002 年6月 2003 年12月 2005 年5月 2007 年10月 2012 年11月 2012 年12月 2013 年2月 2016 年6月 オリックス不動産投資法人 ユナイテッド・アーバン投資法人 日本ロジスティクスファンド投資法人 産業ファンド投資法人 大和ハウスリート投資法人 GLP 投資法人 日本プロロジスリート投資法人 野村不動産マスターファンド投資法人 オリックス 丸紅 三井物産、三井住友信託銀行、ケネディクス 三菱商事、UBS 大和ハウス グローバル・ロジスティック・プロパティーズ プロロジス 野村不動産 総合型 総合型 特化型 コア型 コア型 特化型 特化型 コア型 30,800 百万円 2,050 百万円 158,600 百万円 45,720 百万円 - - - - 237,170 百万円 9,149,426 百万円 2.6% 30,800 百万円 2,050 百万円 173,772 百万円 56,773 百万円 89,010 百万円 221,311 百万円 285,450 百万円 122,020 百万円 981,186百万円 10,751,762 百万円 9.1% REIT全保有物件資産規模(累積ベース) 物流施設の割合 (注)REITのタイプ (出所)各社のプレスリリースを日本不動産研究所が集計(資産規模は底値・追加投資を反映) 特化型:物流施設に絞って投資するREIT コア型:物流施設を主要な投資対象の一つとするREIT 総合型:物流施設のほか、オフィス、住宅、商業施設等に幅広く投資するREIT 図表2 今後1 年間に積極的に新規投資を行う予定の投資家のうち、  各アセットについて検討の対象と回答した割合 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 08/10 19 回 09/4 20 回 09/10 21 回 10/4 22 回 10/10 23 回 11/4 24 回 11/10 25 回 12/4 26 回 12/10 27 回 13/4 28 回 (出所)日本不動産研究所「不動産投資家調査」を基に作成 物流施設、倉庫 ファミリー向け賃貸住宅 オフィスビル(Aクラス) 都心型専門店ビル 単身者向け賃貸住宅(ワンルーム) 郊外型ショッピングセンター  従前から物流施設の取得検討を行ってきた投資 家やAMは、主として首都圏と近畿圏に位置する 施設がその検討対象だった。
しかし、最近では首 都圏、近畿圏内における取得検討エリアの広域化 と、それ以外の地方圏における施設の取得を検討 する傾向が顕著である。
 これは、首都圏、近畿圏の都心に近いエリアで は取引利回りが低いために期待する賃料収入が得 られないと考える投資家やAMが、物件の価格が 都市部より割安で比較的高い利回りを享受できる 首都圏・近畿圏の外縁部や地方圏に着目している ためである。
 首都圏においては、現在は圏央道沿道のエリア に加え、圏央道と交差する高速道路の一つ外側の インターチェンジ(東北道の加須I.C.、関越道 の東松山I.C.、東名高速の厚木I.C.等)ま で検討範囲が広がっていると考えられる。
近畿圏 においても、従来から物流施設が集積する近畿道 沿道や大阪湾岸部のほか、西方で言えば六甲山系 の北側エリアまで検討範囲が伸びている。
 さらに、名古屋を中心とした独自の経済圏を持 つ中部圏も以前から取得検討の対象とされてきた が、これらのエリアに加え、九州の中心都市であ り東アジア等との貿易の結び付きも強い福岡や、九 州の各高速道路が交差する鳥栖、中国・四国地方 を一拠点でカバーできる岡山周辺などにも注目が 集まっている。
 先ほどの「不動産投資家調査」における、期待 利回りに関してのもう一つの特徴として、東京よ りもその他の都市の方が低下の程度が大きいこと が挙げられる。
これは、比較的高い利回りが享受 できる地方圏の物流施設は、売買市場が相対的に 小規模で取得検討可能な物流施設の絶対数も少数 であることから、取得競争が激しくなることで容 易に物件の価格が上昇し、急速に期待利回りが低 下しているものと推測する。
 また、都心に近いエリアであっても検討対象と なりにくかった、市街化調整区域や港湾に近接す る区域に存する物流施設も、積極的に検討する投 資家やAMが増加している。
この事象も物流施設 に対する理解の深化の中で、これらの区域につい ても理解やリスクの定量的な把握が進んでいること がうかがえる。
資金流入は今後も続く  先述の通り、昨年以来、物流施設をメーンの投 資対象とするJ─
劭釘稗圓相次いで上場し、不動 産投資市場におけるプレゼンスが高まっている。
同 時に、不動産の売買市場においてもJ─
劭釘稗圓 存在感がかつてないほど大きくなっている。
各J ─
劭釘稗圓箸癲開発機能を持つスポンサーからの 物流施設の継続的な取得が見込める上に、外部の 第三者からの物流施設の取得にも非常に積極的で あるためだ。
 図表3は、一三年以降にJ─
劭釘稗圓取得し た物流施設の主要取引事例をまとめたものである。
注目すべきなのは、東京都内の湾岸部における取 引利回りがNCF(Net Cash Flow=総賃料収入 から管理運営費用、長期計画修繕費などを差し引 いた現金収入)ベースで五%を切り、四%台に突 入していることである。
 また、首都圏・近畿圏以外でも六%を切る事例 が見られる。
地方圏における期待利回りの低下幅 が大きいことは先ほど述べたが、取引利回りにつ いても低下が著しいことが見て取れる。
すなわち、 実際の取引価格が従来よりも上昇している。
 このような活発な取引が今後も継続するかどうか は、投資資金(エクイティ)と融資の環境いかんに よるところが大きいと考えられる。
物流施設に投資 する投資家の中では、最近では特に海外投資家の動 きが活発だ。
中国の政府系ファンドCICやカナダ の年金基金運用機関CPPIBは、GLP投資法 人のスポンサーであるグローバル・ロジスティック・ プロパティーズと組んでいる。
また、中東オイルマ ネーの代表格であるアブダビ投資評議会は、グッド マンジャパンが組成するファンドに出資している。
 今後も、安定的なインカムゲインが享受可能であ り、インフレ誘導政策等によってキャピタルゲイン も得られる可能性があることから、しばらくは海 外の投資資金の流入が続くものと思われる。
 また国内においても、既存の投資家に加えて、 中長期的な資金運用ニーズのある企業年金や生命 保険なども、物流施設への投資を積極的に検討し ている状況とも聞く。
従って、日本の物流施設に はしばらくは国内外の投資資金が流れ込んでくる ことが見込まれる。
 融資環境についても、各金融機関ともに積極的 に融資を展開しており、非常に良好な環境にある と言える。
従来は融資条件が比較的厳しいとされ た物流施設開発案件に対して、施設用地の購入段 階から一定の融資を行っているほか、地方圏、市 街化調整区域や港湾に近接する区域に存する物流 施設に対しても積極的に融資を検討している。
 従って、投資側、融資側ともに物流施設に対して 資金を拠出する動きは継続し、取引利回りが低下す る傾向もしばらくは持続すると考えられる。
OCTOBER 2013  32 33  OCTOBER 2013 図表3 J-REIT の公表事例に基づく取引利回り (注)リート名のPLD=日本プロロジスリート投資法人、GLP=GLP 投資法人、NMF=野村不動産マスターファンド投資法人、JLF=日本ロジスティクスファンド投資法人 2013 年に取得した物件のうち、首都圏・近畿圏は100 億円以上、中部圏・その他地域は取得額が大きいものを選んだ 建物規模は小数点以下切り捨て、取得価格は億円以下切り捨て、純収益は百万円以下切り捨て (出所)各社のプレスリリースを日本不動産研究所が集計 地域 首都圏湾岸部 首都圏内陸部 近畿圏 中部圏 その他 所在地リート名物件名 建物規模 (屐 建築年月取引月 取得価格 (億円) 純収益 (百万円) 取引利回り (%) 東京都大田区 〃 千葉県浦安市 千葉県市川市 千葉県船橋市 千葉県習志野市 東京都板橋区 神奈川県座間市 〃 神奈川県相模原市 神奈川県厚木市 埼玉県川越市 埼玉県加須市 埼玉県北葛飾郡杉戸町 埼玉県三郷市 埼玉県比企郡川島町 大阪府大阪市此花区 〃 〃 兵庫県尼崎市 〃 〃 愛知県春日井市 愛知県北名古屋市 愛知県東海市 岩手県紫波郡紫波町 宮城県黒川郡富谷町 宮城県仙台市宮城野区 宮城県多賀城市 福島県郡山市 福島県郡山市 岡山県都窪郡早島町 〃 福岡県福岡市東区 佐賀県鳥栖市 〃 〃 佐賀県三養基郡基山町 PLD GLP NMF PLD PLD GLP NMF PLD PLD NMF NMF NMF GLP GLP GLP PLD PLD PLD PLD GLP PLD PLD PLD PLD GLP GLP GLP GLP PLD GLP GLP GLP GLP JLF GLP PLD PLD GLP プロロジスパーク東京大田 GLP 東京 Landport 浦安 プロロジスパーク市川1 プロロジスパーク船橋5 GLP 習志野 Landport 板橋 プロロジスパーク座間1 プロロジスパーク座間2 相模原田名ロジスティクスセンター Landport 厚木 Landport 川越 GLP 加須 GLP 杉戸 GLP 三郷 プロロジスパーク川島 プロロジスパーク大阪2 プロロジスパーク舞洲3 プロロジスパーク舞洲4 GLP 尼崎 プロロジスパーク尼崎1 プロロジスパーク尼崎2 プロロジスパーク春日井 プロロジスパーク北名古屋 GLP 東海 GLP 盛岡 GLP 富谷 GLP 仙台 プロロジスパーク多賀城 GLP 郡山 GLP 郡山 GLP 早島 GLP 早島 福岡箱崎ふ頭物流センター GLP 鳥栖 プロロジスパーク鳥栖2 プロロジスパーク鳥栖4 GLP 基山 75,472 61,904 71,570 138,735 58,504 100,402 53,561 118,688 99,550 51,474 49,504 72,352 67,134 107,050 59,446 157,721 139,211 79,991 57,194 123,614 91,215 93,825 93,988 43,655 30,123 10,219 18,423 36,972 36,851 24,003 27,779 8,163 13,357 24,463 12,253 21,932 29,430 23,416 2005.9 2003.11 2008.5 2008.10 2007.4 1991.8 2008.1 2009.5 2012.7 2007.10 2007.3 2009.5 2005.3 2007.1 2008.9 2011.6 2007.5 2008.2 2010.8 2006.12 2005.8 2007.3 2007.12 2009.6 2004.7 1980.8 2006.4 2007.1 2009.3 2008.8 1993.2 1989.11 2007.12 2006.12 1982.9 2012.7 2012.1 2008.11 6 1 6 2 6 1 6 2 6 7 6 7 1 1 1 2 2 2 2 1 6 6 2 2 1 1 1 2 2 1 1 1 1 4 1 2 2 1 295 227 174 339 110 152 157 279 219 106 114 137 115 190 146 256 250 135 115 245 176 192 125 65 62 8 28 56 53 41 26 11 24 27 7 30 38 47 1,449 1,108 877 1,759 577 1,018 831 1,534 1,209 594 620 767 684 1,026 770 1,476 1,369 750 626 1,236 902 1,008 786 390 346 557 172 333 360 254 159 77 143 170 47 174 225 272 4.9 4.9 5.0 5.2 5.3 6.7 5.3 5.5 5.5 5.6 5.4 5.6 6.0 5.4 5.3 5.8 5.5 5.6 5.4 5.0 5.1 5.3 6.3 6.0 5.6 6.9 6.1 5.9 6.7 6.2 6.1 6.5 5.9 6.1 6.0 5.8 5.9 5.7

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