ロジビズ :月刊ロジスティックビジネス
ロジスティクス・ビジネスはロジスティクス業界の専門雑誌です。
2002年9号
値段
ハマキョウレックス

*下記はPDFよりテキストを抽出したデータです。閲覧はPDFをご覧下さい。

SEPTEMBER 2002 58 株価は半年で二倍に 今回は、静岡県・浜松市に本社を置くハ マキョウレックスである。
二〇〇二年三月期 の連結業績は、売上高一八五億円(前年比 二八・四%増)、営業利益一三・九億円(同 四〇・三%増)、当期利益五・二億円(同三 二・六%増)だった。
連結売上高は六期連 続、営業利益は四期連続で増加しており、物 流業界では数少ない増収増益、かつ過去最 高益更新企業である。
売上高営業利益率は七・五%、連結RO E(株主資本当期利益率)は一〇・二%と 前号取り上げたトランコムと同様、高い収益 力を誇る。
好業績に支えられて、株価は年初 の一〇〇〇円台から直近では二三〇〇円程 度にまで上昇、ほぼ倍増している。
日経平均株価指数は年初に一万円前後、そ の後一万二〇〇〇円手前まで上昇したが、七 月末には一万円割れに戻ってしまった。
株式 市場全体が冷え込む中で、同社の株価は今 なお年初の二倍程度を維持している。
相対的 にも高いパフォーマンスと言えるだろう。
ハマキョウの事業セグメントは、?一般貨 物自動車運送事業(二〇〇二年三月期の売 上構成比は八・九%)、?物流センター事業 (同九〇・六%)、その他事業(同〇・五%) で構成されている。
事業エリアは、関東地方 (同五五・一%)、中部地方(同二七・六%)、 近畿地方(同一六・〇%)、北海道(同一・ 三%)。
関東から中部にかけての東名高速道 路に沿ったエリアに経営資源を集中している。
同社の成長を牽引しているのは物流センタ ー事業である。
九九年三月期、六六億円程 度であった物流センター事業の売上高は、二 年後の二〇〇二年三月期には一六七億円と 大幅に伸長した。
現在、自社保有の物流セ ンターは一五棟を数える。
総面積は九・三万 平方メートルで、この二年間は前年比三〇% ずつ拡大してきた。
物流のアウトソーシング 志向が強まってきたのを受けて設備を拡張し たことが、売り上げの増加に結びついている。
物流センター事業の急成長の陰には、イト ーヨーカ堂の神奈川センターを運営する目的 で九三年に伊藤忠商事と合弁で設立した子 会社、スーパーレックスの存在があることも見逃せない。
同社の二〇〇二年三月期の業 績は売上高八〇億円、経常利益四・二億円 だった。
子会社の活躍も物流センターの事業 収益底上げに貢献している。
日次ベースで収支管理 昨今、日本の物流企業はハマキョウと同様 に、物流センター事業に注力することで、 ?3PL(サードパーティー・ロジスティク ス)企業〞への転身を模索している。
しかし、 その多くは初期費用負担の回収に手間取っ ているのが実情だ。
慣れないオペレーション によって作業ミスが頻発。
無駄なコストが発 生し、なかなか黒字化に漕ぎ着けないことに 第18回 ハマキョウレックス ハマキョウレックスは増収増益を続ける数少ない物流 企業だ。
株価のパフォーマンスも相対的に高い。
物流品 質、労働生産性の高さ、トップセールス力が急成長の源 泉となっている。
今後の課題は後継者の育成や輸配送網 の強化だ。
同業他社との合従連衡など新たな施策を検討 する時期を迎えている。
北見聡 野村証券金融研究所 運輸担当アナリスト 59 SEPTEMBER 2002 頭を悩ませている企業も少なくない。
これに対して、ハマキョウが高い収益力を 保ちながら同事業の拡張を続けることができ ているのは何故か? 差別化要因としては、 ?きめ細かい物流品質、?労働生産性の高 さ、?経営トップの営業力――の三つのポイ ントを挙げることができるだろう。
第一の「きめ細かい物流品質」は、イトー ヨーカ堂のような納品精度への要求水準の高 い企業のセンター運営を数多く経験したこと によって体得したものである。
現場作業はき ちんとマニュアル化されているし、情報シス テムの活用も進んでいる。
物流センターを新 たに立ち上げてから軌道に乗せるまでのスピ ードが速く、そのことが委託先から信頼を得 る要因の一つになっている。
第二の「労働生産性の高さ」は、パート社 員をうまく活用することによって維持されて いる。
作業改善等の意見を吸い上げたり、コ スト意識を浸透させる目的で、パート社員が 毎日順番で現場の責任者を務める「日替わ り班長制度」を導入。
さらに、日次ベースで 物流センターの収支を管理し、それを本社に 報告するルールを設けたりして、現場に緊張 感を持たせるなど工夫を凝らしている。
こうした仕組みを用意するのは一見簡単そ うだ。
しかし実際には、ここまで踏み込んだ かたちで現場を管理している企業はほとんど 見当たらない。
宅配便トップのヤマト運輸、 そしてハマキョウといった高収益企業に共通 するのは、生産性を向上させるための活動に 熱心に取り組んでいる点である。
権限委譲が不可欠 第三の「経営トップの営業力」だが、現場 から離れてしまった多くの経営者とは一線を 画し、大須賀正孝社長自身が効率化に向け た作業改善施策を直接顧客に提案できる、と いうのが強みになっている。
大須賀社長の物 流改善に向けた、一途で正直な思いに共感す る業界関係者も多いのではないだろうか。
顧 客企業のコスト削減に貢献しつつも、きちん と自社の利益を確保するというしたたかさは、 同社の経営力の源泉であると言える。
ただし、社長の個性が強い会社であるから こそ、それが逆に将来の経営課題となること もある。
一つはオーナー企業に一般的に見ら れることではあるが、後継者を含む人材の育 成が途上であるという点だ。
売上高二〇〇億 円程度の規模であれば、経営者の視線が末 端まで行き届くが、今後業容が拡大するにつ れて、これまでのような現場への関わり方は 時間配分上難しくなる。
より権限委譲を進め ていくことが必要となろう。
また、荷主の一貫輸送などのニーズを満た すためには、物流センター事業ばかりでなく、 足回り(自動車運送事業)の強化も欠かせ ないだろう。
地道にトラック運送事業の拡大 に努めるのか。
それとも同業他社との合従連 衡を検討しながら一気呵成にネットワーク整 備を実現するのか。
資本をどのように配分し ていくかが注目される。
同社には優れた物流管理能力がある。
これ を自力のみで拡販していくのか。
他にも移植 していくのか。
中期的な経営戦略上、同社は 一つの岐路を迎えている。
社長のリーダーシ ップに対する社内外の期待感はより一層高ま っている。
きたみ さとし 一橋大学 経済学部卒。
八八年野村 証券入社。
九四年野村総 合研究所出向。
九七年野 村証券金融研究所企業調 査部運輸セクター担当。
社団法人日本証券アナリ スト協会検定会員。
プロフィール ハマキョウレックス過去2年間の株価推移 (円) (出来高)

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